はじめに:固執を捨て、「現実的な成功」へ舵を切る
前回の記事まで、私たちはフィリピンでの挫折経験を教訓とし、「医療、治安、教育の質」という譲れないラインを満たす場所として、クアラルンプール(KL)一択で計画を進めてきました。高額な学費も覚悟し、一歩踏み出せばKLしかない、というある種の「思考停止」状態だったかもしれません。
しかし、人生の計画は、時に予期せぬ場所で得たインスピレーションや、他者とのリアルな対話によって、大きく進化します。そして、計画に固執しない柔軟な姿勢こそが、海外生活において最も重要な資質だと、私は今、確信しています。
本記事は、私たちが当初の「KL一択」という計画への固執を捨て、現実的な成功へと舵を切った経緯を、正直に記録します。教育戦略の「方向性の確信」を深めたクルーズ船での体験、そして「第三者の声」がもたらしたリサーチ範囲拡大の必然性について、私たちの心の動きと共にお話しさせてください。
1. 🚢 教育戦略の方向性の確信:次男が掴んだ「英語は楽しさ」
私たちが目指すデュアルライフの核の一つは、子どもたちのグローバル教育です 。
長男はフィリピンでの経験で英語力が劇的に向上しましたが、私たちの教育哲学の方向性が間違っていなかったかもしれないという大きな気づきを、今回、クルーズ船での次男の体験が与えてくれました。

船内のキッズクラブは、世界中から集まった子どもたちの「遊び場」でした。ゲームやアクティビティ、ダンスイベントなど、新鮮なイベントが盛りだくさんで、次男は船内でできた友達と朝から晩まで一緒に過ごしました。
彼は、そこで英語を「勉強」としてではなく、「楽しいコミュニケーションの手段」として本能的に掴んだのです。先生のジョークが理解できて思いっきり笑う姿、船内スタッフに自分から英語で積極的に質問する姿――。言語が壁ではなく、世界とつながるための最高のツールであることを、彼の姿が雄弁に物語っていました 。
私たちは「高品質な教育」にこだわり、高額な施設を求めがちでした 。しかし、この体験から得た現時点での結論は、「高額な施設」だけでなく、「楽しい環境」こそが次男の英語力の鍵になるのではないかということ 。そして、「IBでの卒業進路」にこだわるのではなく、「教育的な質はそれなりに欲しいが、中〜低学費のプライベートスクールで十分」という私たちの教育スタンスを後押ししてくれる出来事になりました。
2. 🏘️ 「KL一択」の崩壊:日本人親子とのリアルな対話
KLへの強いこだわりは、フィリピンでの不安から生まれた、ある種の「思考停止」状態でした。その状態から私を解放してくれたのが、クルーズ船で出会った日本人親子とのリアルな対話です。
その親子は、「KLは高い」という知人からの情報を受け、まずペナンに2週間滞在したそうです。

見積もりでもやっぱりKLよりもペナンの方が安かったんですよ。でも、1年間ペナンに暮らすとなると、ちょっと予算的に厳しいかなと思って。今は、予算的にセブ留学に目標を変えようかと検討しているところなんです
という現実的な悩みを聞きました 。
同時に、「お金があるならペナンに1年間留学したい」という言葉を聞き、私のペナンに対するイメージは一変しました。私はてっきりペナンを「インフラが未整備な田舎」だと思っていましたが、その方の話からは「インフラ面や危険性、野良犬の件などがセブより良い環境」だと感じられました。
また、KL一択の候補だったモントキアラについても、教育移住コミュニティで「インフラがかなり前に整備されたため、老朽化が目立ちだしている。むしろ新しい街の方が住みやすいかも」という意見を目にすることもあり、他の選択肢もまだ時間があるので考えようと考えていた矢先でした。
やはり第三者の声は、「自分の目で情報を集めずに、一つの情報源に固執するのは危険だ」という、当たり前だけど、現実的な教訓を与えてくれました。これにより、私はKL一択の思考停止状態から脱却し、リサーチ範囲を広げる必然性が生まれたのです。KL近郊のプチョンなども、住居の候補地として検討し始めています。
3. 🎯 ビジネス・ドリブンなピボット:ジョホールバル(JB)浮上のロジック
リサーチ範囲をKL近郊やペナンに広げる中で、最終的に新たな有力候補として急浮上したのが、ジョホールバル(JB)です。これは、教育や生活環境だけでなく、「TCGショップ開業」というビジネス上のチャンスを最大化するという視点から導き出された、純粋なビジネス・ロジックです 。
ペナンは町の雰囲気も素敵ですし、KLよりは生活費を抑えられそうですが、KLからもシンガポールからも距離的に中途半端です。
一方、JBが魅力的なのは、何と言ってもシンガポールとの近さです。私たちのTCGビジネスは、本物を集めたい富裕層コレクターをターゲットとしています 。シンガポールへの出店はハードルが高すぎますが、JBは非常に近接しており、2026年にRTS Link (Rapid Transit System Link)が開通予定です。これにより、シンガポールからの高付加価値なお客さんを獲得しやすくなるのではないか?という、ビジネス上のチャレンジとしては面白みがあります。
「教育的な質はそれなりに欲しいが、中〜低学費のプライベートスクールで十分」という教育費の柔軟性を手に入れた今、ビジネスチャンスという面白みを兼ね備えたJBは、KL、ペナンに並ぶ、新たな有力な選択肢として急浮上しました。
4. 🧭 心境の変化の総括:「柔軟な計画」こそが成功への道
フィリピンでの挫折、クルーズ船での成功、日本人親子との対話、そしてTCGビジネスの論理。これらすべてが、当初の「KL一択」という計画を揺るがしました。
計画に固執することは、時に目の前にあるはずの「現実的な成功」を見逃すことに繋がる――
この気づきは、私にとって大きな成長であり、今後の挑戦の基本姿勢となるでしょう。
私たちは、このピボットを宣言し、新たな候補地としてKL、ペナン、JBの三都市をフラットに比較検討することを決めました。これから、この三都市について、物価や家賃、学費も含めて徹底的に調査を進めますが、机上のリサーチだけでは足りません。最終的には必ず現地へ足を運び、自分の目で「家族が生活できる場所かどうか」を判断しなければならないという、次の大きなミッションが見えてきました。
そして、この計画は3年後の実現を目指すもの。
私たち自身の環境も、世の中の情勢も、この3年間で変わらない保証はどこにもありません。だからこそ、私たちはこれからも変化に柔軟に対応し、計画変更は「ありえるもの」「むしろ望ましいもの」として考えていくつもりです。
この柔軟な計画の進化こそが、「家族で歩む成長記録」というこのブログのリアリティであり、必ず現実的な成功へと繋がる一つの道筋になると信じています。



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