【海外の洗礼】「物価安いは幻想だ」日本と同じ生活レベルを求めると生活費はいくらになるのか?

海外生活準備ガイド

はじめに:崩れた「物価が安い国」の幻想

「海外移住すれば、生活費は日本より安くなるはず」

脱サラし、家族で二拠点生活の夢を追いかけている私たちにとって、フィリピンでの約1年間の経験は、その甘い幻想を打ち砕く「海外の洗礼」そのものでした。

当時、私たちが滞在していた場所は、一般的に「物価が安い」とされています。確かにローカルな食堂で食事をすれば格安です。しかし、子育て世代の親として、そして駐在妻時代の基準を知る私としては、「治安」「衛生」「教育」「食の質」など、譲れないラインがありました。

その「譲れないライン」を保とうとした結果、私たちの生活費は驚くべき金額に膨れ上がりました。本記事では、そのリアルな内訳を赤裸々に公開し、「物価安は幻想」である理由を徹底的に解説します。これは、漠然とした夢を具体的な行動に落とし込みたい、すべての脱サラ海外移住予備軍の皆さんへの警告と教訓です。

 悲鳴を上げた5つの出費内訳:「日本水準」のコスト

私たちは、現地の物価に合わせるのではなく、「日本と同じ、あるいはそれ以上の快適さ安心」を求めました。その結果、毎月およそ175,400ペソ(当時のレートで約40万円台後半)という出費を計上していました。

物価が安いフィリピンで、なぜこれほどの金額が必要になったのか?特に負担が大きかった5つのコストを見ていきましょう。(※以下は2023年当時の月額概算です)

① 住居費:高額でも手に入らない「日本品質」

項目費用(ペソ)補足
住居費
高級コンドミニアム
38,000ペソ警備員常駐で安全を確保。日本の地方都市の家賃と変わらない水準。1bedroom
突発的な修繕・清掃費用ほぼ毎月発生実質的な生活費を圧迫した隠れたランニングコスト。

日本基準の清潔さや安全を担保するため、私たちは現地で「高級」と言われるコンドミニアムを選びました。しかし、支払った高額な家賃が保障したのは「フィリピン・クオリティ」でした。

【築浅なのに頻繁な修繕コスト】
まず驚いたのは、建物そのものの品質です。入居したコンドミニアムは築浅(たしか2年程度)にも関わらず、壁や床の修繕、設備の故障がしょっちゅう発生していました。

  • 扉がスムーズに開かない。
  • 壁の縁から虫が発生する。
  • 硬水でシャワーがすぐ目詰まりして壊れる……。

高額な家賃を支払っても、日本のような「当たり前の品質」は手に入りません。私たちは、高額な家賃と「自分で手配する修繕」のギャップに大きなストレスを抱えていました。部屋も狭く、長男にはリビングのソファーで寝てもらうしかありませんでした。

【見落としがちな隠れた清掃費用】
さらに、高額な家賃とは別に、維持管理のためのコストが想定外にかかりました。

現地の空気の悪さからホコリが大量に発生し、エアコンの利きが極端に悪くなるため、高額な電気代を抑えるためにも、2か月に一度の専門業者による清掃が必須でした。また、日本ではコンドミニアムでは馴染みが薄い「グリーストラップ(厨房の排水トラップ)」の定期清掃も2か月に一度必要でした。

これらの費用は、私たちの「隠れたランニングコスト」として毎月重くのしかかりました。支払った高額な費用は、品質ではなく「相対的な安全性」や「立地」に対するものだったのです。

② 食費:安心を買うための代償

項目費用(ペソ)補足
食費(日本食材、外食を含む)34,000ペソ家族の健康と食卓の精神安定のために、日本食材への出費が嵩む。

日本の調味料、子どもの好きなレトルトは、すべて定価の2.5倍!帰国する度に、重いカレールーやケチャップを大量に買い込んでいたのは、もはやサバイバルでした。

現地のローカル食堂は安くても、子どもの口に入れるには衛生面で不安が残り、結局は、美味しくてリーズナブルな韓国料理店や、現地の高級レストランを利用する機会が増えていきました。安全・清潔な「食」を追求した結果、食費は日本の水準をあっさり超えてしまったのです。もちろん、フルーツ(特にバナナ・マンゴなど)はフルーツスタンドや市場で安くておいしいものを手に入れることができました。

③ 教育と交際費:青天井の「見えない出費」

項目費用(ペソ)補足
学費・イベント参加費40,000ペソ基本学費に加えて、毎月発生する高額な学校イベント費用。ただし、子供二人分。
家庭教師代(英語)20,000ペソ私自身の英語力向上のため。
週4回、4時間ずつ
学校送迎サービス11,500ペソ子供たちのスクール送迎費用。コスト削減のために、carpoolを利用。

現地の学校では、外国人としてインターナショナルスクールプライベートスクールに通うことになりますが、基本の学費はリーズナブルでしたが、イベント費用が驚くほどかさみました。

特に衝撃だったのが、クリスマス会。SMモール(フィリピンの巨大モール)の映画館を貸し切り、2日間にわたって開催され、その衣装を5着用意。さらに、保護者席の席代だけで1日1.5万円!こうした出費は、事前の 生活費 シミュレーションには全く含まれていませんでした。

また、お友達の誕生日会は、ホテルのプールサイドや室内遊び場を貸し切るなど、日本とは比べ物にならないほど盛大で、それなりのプレゼント代が毎月のように発生しました。これは、親としても子どもの現地での人間関係を築くための投資だと諦めて払うしかありませんでした。

④ 医療とワンオペのコスト

夫が日本にいるワンオペ状態だったため、私の体調不良やビジネス上の急な不在に対応するためのシッター代(12,000ペソ)は必須でした。

また、医療面では、高額な次男の歯科治療(10万円)を経験。技術力に不安を感じても、高品質なサービスはさらに高額になります。海外での「安心」は、すべてお金で買う必要がありました。

「物価安」が幻想である本当の理由

なぜ、海外移住 生活費 リアルがこれほどまでに想定外の金額になるのでしょうか?

それは、「安いのはローカル基準の品質だけ」という厳しい現実があるからです。

  1. 「日本品質」へのプレミアム
    日本食材や調味料は2.5倍。安さを求めればフィリピン製などで妥協できますが、野菜や肉の品質は日本の基準とはかけ離れています。「物価安」の恩恵を受けられるのは、「現地の生活水準で妥協できる人だけ」なのです。
  2. 高額でも避けられない「フィリピン・クオリティ」
    家賃38,000ペソの高級コンドミニアムですら、ドアが壊れ、虫が出る。高額な費用を払っても、日本のような「当たり前の品質」は手に入りません。私たちが払うコストは、品質に対するものではなく、「相対的な安全性」や「立地」に対するものだったのです。
  3. 為替の変動リスク
    そして、毎月襲いかかる円安の波です。円建ての収入に頼っていると、為替が変わり円が弱くなるたびに、生活は苦しくなっていきます。「海外移住 生活費 リアル」は、為替という外部要因に常に晒されているのです。

挫折から学んだ最大の教訓:自分で稼ぐ力こそが保険

フィリピンでの経験は、私に一つの確固たる真実を教えてくれました。

「貯金を切り崩して生活する」という選択肢は、海外では恐ろしくリスクが高いということです。為替は不安定、想定外の高額出費は必ず発生します。

現地レベルにしていいもの(例:現地の美容院、お米をローカルに)と、日本水準を譲れないもの(例:住居の安全性、子どもの教育と健康)の基準を自分の中に明確に作らなければ、出費は青天井になり、結果的に日本で生活するより高くなります

そして、譲れない基準を守るためには、お金が必要です。

フィリピンでの挫折は、私たち家族に誰にも依存せず、自分の力で資金を確保することの重要性を痛感させました。

だからこそ、私たちは、二拠点生活の目標実現に向けて、漠然とした夢を具体的なビジネス行動に落とし込んでいます。今は、ブログでの情報発信はもちろん、マレーシアでのTCGビジネスの準備や、プログラミングスキルの習得など、海外 ビジネスの道を切り開くための挑戦を加速させています。

海外移住を成功させるための本当のシミュレーションとは、「最低限必要な生活費」ではなく、「望む生活レベルに必要な資金を、現地で稼ぎ続ける方法」を確立することなのです。

次回のエピソードでは、このフィリピン滞在中に起こった子どもの入院事件という最大の危機と、そこから得た人生最大の教訓について、さらに詳しくお話しします。

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